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食物アレルギー

【小児科医師執筆】赤ちゃん・乳児の食物アレルギー(ミルク・離乳食)|よくある症状と注意点

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

「アレルギー」という言葉、いろんなところで目にしますので知らない方はおられないかもしれません。

でも具体的に赤ちゃんに起こる食物アレルギーについて、あまりよくわからない方もおられるのではないでしょうか?

今回は、特に赤ちゃんに起こる食物アレルギーについて、その症状や注意点をご説明いたします。

赤ちゃんに起こる食物アレルギー|原因

まず、アレルギーとは何が起こっているのか、アレルギーの起こる原因、そして赤ちゃんに起こるアレルギーの原因についてご説明します。

アレルギーとは?

アレルギーとは、わたしたちの体を細菌やウイルスから守っている免疫システムによる、過剰な防御反応のことです。

遺伝的にアレルギーの素因を持つ人が多くいますが、アレルギー素因がなくても起こる人もいます。

アレルギーの症状は、アレルギーを起こす物質の種類やどこからその物質が体内に入ってくるかによって異なります。

最も一般的なアレルギー疾患は鼻炎やアレルギー性結膜炎で、その症状は

・鼻水
・鼻のかゆみ
・目のかゆみ

などです。

そのほか皮膚炎(アトピー)や喘息の原因ともなります。

アレルギーの起こる原因

わたしたちの日常生活のなかに普通にあるもので、

・花粉
・ダニ
・カビ
・食品(特にピーナッツ、木の実、小麦、大豆、魚、貝類、卵、牛乳など)
・動物の毛
・医薬品
・化学薬品

などが原因となります。

このように原因となる物質をアレルゲンと呼びます。

アレルゲンが体内に入り、免疫システムがこの無害な物質を危険な侵入者と勘違いすることが、アレルギー反応のきっかけになります。

その後免疫システムは、その特定のアレルゲンを警戒する抗体を産生します。

そして再びアレルゲンが体内に入ってくると、これらの抗体はアレルゲンを即座に攻撃します。

この攻撃の過程で、かゆみの原因となるヒスタミンなどの化学物質を放出され、アレルギー症状が引き起こされることになるのです。

赤ちゃんの食物アレルギーの原因

食物がアレルゲンとなるのが食物アレルギーです。 よくある原因は、実は年代ごとに異なります。

子どもに起こる食物アレルギーの約90%は、以下の8つの食品が原因とされています。

・牛乳
・卵
・小麦
・大豆
・木の実
・ピーナッツ
・魚類
・貝類

このうち、赤ちゃんに起こる食物アレルギーでは、卵、牛乳、小麦が最も一般的なアレルゲンです。

食物アレルギーの原因

赤ちゃんに起こる食物アレルギー|症状

次に、赤ちゃんに起こる食物アレルギーの症状についてご説明します。

食物に対するアレルギー反応の症状は、軽度のものから重度のものまであります。

反応は、多くの場合、食物を口に入れてから数分から数時間以内に現れます。

例としては、以下のような症状があります。

症状|肌や粘膜の症状

肌や粘膜(口や鼻のなか、目の白いところなど)は、アレルゲンに接触してから早い時期に症状が現れるので、わかりやすいところです。

・赤み
・かゆみ
・少し盛り上がる発疹(じんましん)

が特徴的な肌の症状です。

このほか、

・鼻づまり
・鼻水
・目のかゆみや充血

などもみられます。

症状|呼吸の症状

食物アレルギーの症状として気づかれないこともありますが、呼吸の症状がみられることもあります。

・咳呼吸困難
・かすれた声
・ヒューヒューする呼吸音

などがみられます。

症状|消化器の症状

あまり一般的ではありませんが、嘔吐や腹痛を起こすことがあります。

ときには下痢を伴うこともあり、食後数時間が経過してから起こることもあります。

症状|急いで病院を受診すべき症状の特徴

重症アレルギーであるアナフィラキシーの症状には、以下のようなものがあります。

・口、舌、または喉が腫れる
・じんましんが広い範囲にみられる
・呼吸困難
・繰り返し咳をする
・ヒューヒューと高い音のする呼吸音
・ものが飲み込みにくくなる(嚥下困難)
・かすれた声
・顔や唇の色が青くなる
・意識を失う
・手足の力が入らずぐったりとなる

このような症状を認めるときには、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。

受診すべき症状の特徴

赤ちゃんに起こる食物アレルギー|対処法

次に、赤ちゃんの食物アレルギーの対処法をご説明します。

対処法|基本方針

治療の基本方針は、症状の原因となる食品を避けることです。

主治医の診察を受け、赤ちゃんがアレルギーを持っている食物(アレルゲン)が見つかったら、その食物や類似食品を避けることが非常に重要です。

対処法|ミルク・離乳食の注意点

赤ちゃんにアレルギーの症状がない場合、妊娠中および授乳中に特定のアレルゲンの食事を母親が制限することは、食物アレルギーを予防する手段として日常的には推奨されていません。

この時期にアレルゲン性の高い食品を母親が避けても、赤ちゃんに対してアレルギーを予防する効果はないことが示されています。

母乳は赤ちゃんにとって理想的なの栄養補給方法です。

母乳はアレルギー反応を起こす可能性が低く、消化しやすく、赤ちゃん自身の免疫システムを強化します。

特に生後4ヶ月~6ヶ月では、赤ちゃんの

・湿疹
・牛乳アレルギー

を抑えることができる可能性があります。

ただし、母乳で育てられている赤ちゃんが食物アレルギーを持つ可能性がある場合、お母さんはアレルゲンを含む食物を避けることが重要です。

少量の食物アレルゲンが母乳を通して赤ちゃんに伝わり、アレルギー反応を起こす可能性があります。

母親が母乳を与えることができない食物アレルギーのリスクがある赤ちゃんには、アレルギー用に特殊加工したミルクが、低刺激性の代用品として推奨されています。

生後4ヶ月~6ヶ月の間に、

・果物(りんご、梨、バナナ)
・野菜(緑黄色野菜、サツマイモ、カボチャ、ニンジン)
・穀類(米など)

を離乳食として始めます。

この際、一度に1つずつ、単一成分の離乳食を導入するとよいでしょう。

この方法で離乳食を進めると、3日~5日ごとに新しい食物を導入することができます。

このようにゆっくりと行うことで、アレルギー反応の原因となる食物(アレルゲン)を特定することができます。

アレルギーを起こす可能性の低い食品が問題ないことが確認できると、同じ生後4ヶ月~6ヶ月の間に、アレルギーを起こす可能性の高い

・卵
・乳製品
・ピーナッツ
・木の実
・魚
・貝類

などを徐々に開始することができます。

事実、これらアレルギーを起こす可能性の高い食品の開始を遅らせると、赤ちゃんがアレルギーを発症するリスクが高まる可能性があります。

つまり、アレルギーを起こす可能性の高い食物を早期に食べ始めることで、実際に赤ちゃんの食物アレルギーを予防することができるのです。

対処法|スキンケアのポイント

赤ちゃんのスキンケアは、食物アレルギーの治療として、また予防の観点からも重要です。

というのも、赤ちゃんの食物アレルギーはいきなり発症しているわけではなく、生まれてから半年くらいまでの間にできる、アトピー性皮膚炎と関係することが指摘されているからです。

アトピーの肌は表面のバリアが崩れており、さまざまなアレルゲンが容易に肌から侵入し、アレルギー反応を起こすきっかけになると考えられています。

したがって、アトピー肌の赤ちゃんだけでなく、全ての赤ちゃんにおいて、特に生まれてから半年くらいはしっかりとスキンケアをし、防御機能を高めておくことが重要です。

まず大切なことは、刺激の低い赤ちゃん用のスキンケア製品を用いることです。

・石けん
・ベビーオイル

などは、香料を含まないシンプルなものにします。

また肌の保湿も非常に重要です。

肌を保湿することは、赤ちゃんの肌の柔らかい感触を保つだけではなく、食物アレルギーを防ぎます。

それは保湿によって肌のバリアを保護し、ピーナッツや卵などのアレルゲンが、肌の亀裂を介して体内に入ることを防ぐためです。

保湿のためには、入浴直後のまだ肌が湿っているときに、軽く水分を拭き取ったのちに

・保湿用クリーム
・軟膏

を薄く塗ることです。

なお、

・何度も肌を洗う
・何度も入浴する

と逆に肌を痛めることになります。

入浴は毎日一回程度で十分で、汗をかきすぎたときなどは、濡れたタオルでこまめに拭き取るだけで十分でしょう。

対処法|お薬による対処法

残念ながら、薬でアレルギーの原因を完全に治すことは困難です。

基本的には、赤ちゃんのかゆみや発疹などの症状和らげる治療が中心です。

通常は飲み薬と軟膏が処方されます。

ただし、赤ちゃんが重症の食物アレルギー反応であるアナフィラキシーを起こしたことがある場合には、アナフィラキシーの症状を止めるために、アドレナリンの緊急注射キットが処方されることがあります。

詳細については、かかりつけ医にご相談ください。

お薬による対処法

まとめ

赤ちゃんの食物アレルギーの原因や症状、そして対処法についてご説明しました。

ご自分の赤ちゃんが食物アレルギーを持っているとわかると、赤ちゃんの将来を思い、悩んでしまう方もおられるかもしれません。

しかし、赤ちゃんの時期に発症した食物アレルギーは、成長の過程でアレルゲンである食物に反応しなくなり、結果的にその食物を食べることができるようになる可能性が高いことが知られています。

おもなアレルゲンである

・卵
・乳
・小麦

は、赤ちゃんの時期に発症することが多いにもかかわらず、6歳までにおよそ9割の赤ちゃんがこの食物を食べることができるようになります。

ですから、しっかりと食物アレルギー治すために、また治す可能性をより高めるために、赤ちゃんに食物アレルギーの可能性があることがわかれば、かかりつけ医に相談し、適切なケアを受けるようにしましょう。