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【小児科医師執筆】赤ちゃんの鼻水・鼻づまり原因と対策|受診の目安とホームケア方法

【小児科医師執筆】赤ちゃんの鼻水・鼻づまり原因と対策|受診の目安とホームケア方法

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

鼻がつまって苦しそうにしている赤ちゃんをみていると、お父さん、お母さんはなんとかしてあげたいと思うのではないでしょうか?ただでさえ鼻の小さい赤ちゃんは、すぐに鼻づまりで苦しくなってしまいます。
今回の記事では、赤ちゃんの鼻づまりはなぜ起こるのか、また自宅での対応方法や医療機関を受診するポイントについて、ご説明します。

赤ちゃんの鼻の特徴

まず赤ちゃんの鼻の特徴を3つご紹介します。
【赤ちゃんの鼻の特徴】
  • ・赤ちゃんの鼻はとても狭い
  • ・赤ちゃんは基本的に鼻で呼吸をする
  • ・赤ちゃんの鼻の粘膜は非常に敏感

まず赤ちゃんの鼻は、とても狭くなっています。
CT検査を利用し、180人の赤ちゃんの鼻のサイズを調べた研究によると、最も狭いところは2mm前後しかありませんでした。
元々狭いので、少し鼻水が出るだけでも鼻づまりで苦しくなってしまいます。

また赤ちゃんは、生まれてから生後6か月くらいまで基本的に鼻で呼吸をします。
鼻で呼吸しているので、おっぱいを飲み続けていても苦しくならないのですが、鼻づまりになると、呼吸ができなくなり、とても苦しくなってしまいます。

さらに赤ちゃんの鼻の粘膜は、非常に敏感ですぐに鼻水が出ることがあります。本来、私たちの鼻の粘膜は、外から侵入してくるウイルスや花粉、冷たい空気などをブロックするフィルターのような役割を果たしていますが、生まれたばかりの赤ちゃんの粘膜は、冷たい空気などの刺激を受けてすぐに分泌物を出します。そのため、よく鼻水が出たり、鼻づまりになったりします。

【出典】


Likus W, et al. Nasal region dimensions in children: a CT study and clinical implications. BioMed Research International. 2014; Article ID 125810,

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりはなぜ起こるのか?

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりはなぜ起こるのか?

次に赤ちゃんの鼻づまりの原因をご説明します。
まず、多い理由はウイルス感染症です。
かぜの原因となるようなウイルスは、鼻の粘膜から侵入しようとします。しかし、ウイルスの侵入を防ぐために、私たちの体の免疫細胞が鼻の粘膜に集結し、戦いを起こします。その結果、鼻水が増え、鼻づまりになってしまいます。
また、アレルギーが原因となることもあります。
アレルギーの原因となる花粉やホコリが鼻から入り、鼻の粘膜に付着すると、私たちの体がアレルギー反応を起こすことがあります。アレルギー反応として分泌物が増え、結果的に鼻水が増えることになります。
このほか、寒い空気を吸うことで鼻水が出ることもあります。

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりはなぜ起こるのか?

病院を受診するタイミングの目安【赤ちゃんの鼻水・鼻づまり】

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりの対処法をご紹介する前に、病院やクリニックを受診すべきタイミングについてご説明しておきます。

鼻水・鼻づまり【受診の目安:赤ちゃんの呼吸が苦しそう】

まず呼吸が苦しそうなときは、夜間であっても病院を受診することをお勧めします。
苦しそうな呼吸というのは、
・普段よりも速い呼吸
・赤ちゃんが肩を使って呼吸をする
・呼吸をすると肋骨の間が凹む
・鼻の穴を大きく広げて呼吸する
などが当てはまりますが、お父さん、お母さんの見た目の判断で構いません
体の中の酸素が足りないため、病院で酸素を吸わせてあげる必要があることもありますので、苦しそうなときは早めの受診をお勧めします。

鼻水・鼻づまり【受診の目安:ミルクが飲めない】

赤ちゃんにとって、ミルクが飲めないほど苦しい状態は、普通ではありません
飲めたとしてもすぐに休んでしまう、普段以上の時間をかけても飲み終えない、など授乳が容易でない場合も、早めに受診した方がよいでしょう。

鼻水・鼻づまり【受診の目安:赤ちゃんが寝れない】

赤ちゃんが苦しいためにぐずって寝れないときも、受診を検討すべき状態です。
もちろん、自宅でできるケアをされるのも構いませんが、赤ちゃんが寝れないと、お父さん、お母さんも寝れなくなります。
あまり頑張りすぎないで、夜遅くなる前に受診するほうがよいでしょう。

病院を受診するタイミングの目安【赤ちゃんの鼻水・鼻づまり】

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりで夜中に困ったら!ホームケアの方法

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりがあっても、さほど苦しそうでなければ、ご自宅でケアをしても問題ありません。
次に、自宅でできる実践的ホームケアの方法をご紹介します。

赤ちゃんの鼻水・鼻づまり【ホームケアの方法:拭き取る】

赤ちゃんが上手に鼻をかむことができるのは、早くても2歳以降と言われています。もちろん個人差はありますが、2歳になる前に無理やり鼻をかませることは避けたほうがよいでしょう。
まずは、外から見える鼻水をティッシュペーパーなどで、優しく拭き取ることです。
もし鼻水が出ていても、口を開けないで鼻で呼吸ができているなど、全く苦しそうでなければ、まずはこれだけでも十分です。

赤ちゃんの鼻水・鼻づまり【ホームケアの方法:綿棒でとる】

鼻の穴から見えるくらいの位置に鼻水があれば、綿棒でとることも有用です。
ポイントは、あまり鼻の奥まで入れないことです。
むしろ鼻の穴の入り口あたりを少し刺激しながら鼻水を取り出そうとすると、くしゃみをして一気に鼻水が出ることもあります。

赤ちゃんの鼻水・鼻づまり【ホームケアの方法:鼻水吸い器で吸引する】

頻回に鼻づまりになるようであれば、市販の鼻水吸引器を使うことも検討します。
いくつか種類がありますが、ドラッグストアで入手できるもので構いません。
また吸引は、食事の前や寝る前など、鼻がつまっていると苦しくなる状況を見計らって行うのがよいでしょう。やりすぎると、赤ちゃんの鼻の粘膜が傷つき、鼻水が増える原因となってしまいます。

上手に鼻水吸い器を使うコツ

● 赤ちゃんの頭と体を固定する
吸引されると赤ちゃんは嫌がって顔や体を動かします。激しく動かすと、上手に吸引ができませんし、手元が狂うと逆に赤ちゃんの顔を傷つけてしまうことになります。
おすすめは、赤ちゃんを仰向けに寝かせ、吸引する人が赤ちゃんの頭の位置にきます。そして吸引する人が両足の間に赤ちゃんの頭をはさみ、そして足を使って赤ちゃんの肩、体を押さえ込むことです。

● 吸引器の先端は鼻の穴の入り口
吸引器の先端は、鼻の穴の入り口あたりで十分です。鼻の穴に差し込むときは、顔に対して垂直にする 吸引器の先端を鼻の奥まで入れると、鼻の粘膜を傷つけてしまい、さらに鼻水が出る原因となることがあります。
したがって吸引は、鼻の入り口あたりから行うだけで構いません。
また吸引器の先端は、鼻の穴の入り口から赤ちゃんの顔に垂直に、水平に軽く挿入することです。
これは鼻の構造が関係していますが、水平に差し込むことで、溜まっている鼻水をしっかりと据えることがあります。もしうまく吸えなければ、少しだけ向きを変えてみるとよいでしょう。方向少し変えると、一気に吸引できることもあります。

上手に鼻水吸い器を使うコツ

赤ちゃんの鼻づまり【乾いた鼻水・「鼻くそ」の対処法】

もし赤ちゃんの鼻水が固まっていたり、粘りが強かったりして、うまく取れないとき、次の3つを試してみましょう。
● 加湿する
お部屋を加湿することで、鼻水を湿らせることです。
ただ実際はなかなか難しいので、例えば浴室の蒸気を吸わせたり、蒸したタオルで鼻の周囲を湿らせたりするのも一案です。

● 食塩水を垂らす
食塩水を数滴鼻に垂らし、その後鼻を吸引します。
食塩水は市販のものを使用するのもよいですし、自分で作っても構いません。
水500mlに食塩5g、また手元にあれば重曹を2.5g加え、よく混ぜます。
これを人肌程度に温め、市販の食塩水の代わりに利用してもよいでしょう。なお作った食塩水は、しばらく冷蔵庫で保存できます。

● 母乳を垂らす
スポイトなどを使い、母乳を1~2滴ほど赤ちゃんの鼻に垂らし、その後吸引することも効果があるとされています。
これは母乳に含まれる免疫グロブリンなどによる抗炎症作用も期待されています。
実際に、鼻づまりの赤ちゃんの鼻に母乳を垂らすことで86%のお母さんが、赤ちゃんの呼吸が楽になったと報告しています。

【出典】


Karcz, K, et al. Non-nutritional use of human milk: part 1: a survey of the use of breast milk as a therapy for mucosal infections of various types in Poland. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(10): 1715. doi: 10.3390/ijerph16101715

まとめ

赤ちゃんの鼻水・鼻づまりの原因と対策をご説明しました。
赤ちゃんの鼻水は、実は薬ではほとんどよくなりません。ウイルス感染による鼻水であれば、赤ちゃんは自分の力で治すことができますし、自然によくなります。
苦しそうでなければ、経過をみても構わないでしょう。