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【小児科医師執筆】赤ちゃんの熱性けいれんとは?保護者に出来る対応と予防法

【小児科医師執筆】赤ちゃんの熱性けいれんとは?保護者に出来る対応と予防法

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

目の前で赤ちゃんがけいれんしだすと、驚き慌てることでしょう。これは当然のことです。 ところが赤ちゃんに多い熱性けいれんは、実はあまり心配する必要のない病気であることがわかっています。 そこで今回は、赤ちゃんの熱性けいれんについて解説したいと思います。

熱性けいれんとは?

熱性けいれんとは、
  • ・主に生後6か月の赤ちゃんから5歳までの幼児に起こるけいれん
  • ・38℃以上の発熱を伴う
  • ・特にけいれん発作の原因が特定できないもの
を指します。
熱がないときにみられるけいれんは、無熱性けいれんと呼ぶこともあります。

熱性けいれんの頻度

日本人の子どもの20〜30人に1人は熱性けいれんを起こしたことがあると考えられており、乳児・幼児にとって決して珍しい病気ではありません。
小学校のクラスに1人は熱性けいれんを起こした子どもがいる、と考えてもよいかもしれません。

熱性けいれんの主な症状・経過

熱性けいれんのうち、単純性けいれんと呼ばれるものがあります。
【単純性熱性けいれん】とは
  • ・両方の手足に同じように起こるけいれん
  • ・持続時間が15分未満
  • ・24時間以内にけいれんを繰り返さない
単純性熱性けいれんは、多くは5分程度でけいれんがおさまりますので、けいれんを起こして救急車を呼んだとしても、病院に到着する前には治っていることが通常です。
けいれん後はしばらく目の焦点が合わず、ぼんやりとしていますが、30分ほど経過を観察していると、元どおりに戻ることが一般的です。

上記に当てはまらないものは、複雑性熱性けいれんと呼びます。
けいれんが片方の手足だけであることや、意識が回復するまでのぼんやりした意識の持続時間が長くなるなどの特徴があります。

またけいれんが30分以上続く場合は、熱性けいれん重積(じゅうせき)と呼びます。

熱性けいれんの予後

単純性熱性けいれんを起こした子どもの約70%は、再びけいれんすることがありません。
つまりその大多数は、一生のうちに一回しかけいれんしませんし、後遺症を残すこともありません。

再度けいれんしやすい要因として、
  • ・両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある
  • ・1歳未満でけいれんした
  • ・熱が出始めてから短時間でけいれんした(1時間以内)
  • ・けいれん時の体温が39℃以下であった
などが挙げられています。
また単純性熱性けいれんを起こした子どものうち、90%以上はてんかんを発症することがありません
てんかんとは
けいれんを繰り返し、長期間にわたりけいれんを抑える薬を飲み続ける必要がある状態

複雑性熱性けいれん熱性けいれん重積を起こした場合、また元々神経学的な病気を抱えていた場合は、けいれんを繰り返すてんかんを発症する危険性が高まります。

熱性けいれんの原因・検査

明らかな原因がわからないものが熱性けいれんです。
単純性熱性けいれんの場合、多くが一生のうち1回しかけいれんしないこともあり、けいれんの原因を調べる検査をすることはありません。
ただし、熱が出ている原因については、必要に応じて検査をすることがあります。

複雑性熱性けいれんけいれん重積の場合、脳波を含む検査を行い、検査結果に応じて治療を開始します。

熱性けいれんの自宅での対処法・予防法

熱性けいれんの自宅での対処法・予防法

次に、熱性けいれんが自宅で起こった時の対応法、また予防法についてご説明します。

熱性けいれん|自宅での対処法

もし自宅でお子さんがけいれんし始めたら、まず周囲に危険なものがない、安全な場所に移動してください。
また呼吸を妨げないように、服を緩める、顔の周りにクッションを置かない、などができることでしょう。
同時に救急車を呼びます。
救急車を呼ぶと、電話に出た人から対処法を指示してもらえることもありますが、ここでご紹介した以外のことを指示してもらうことが一般的です。
なお、自宅にあるものでけいれんを止めることはできません。

余裕があれば、けいれんの様子をよく観察しておいてください。
可能であれば、動画をとっても構いません。
病院に着く頃には、けいれんが治っていることが一般的ですので、けいれんの様子を見ることができると、医師の判断に大きく役立ちます。

ちなみに、かつて舌をかまないように口の中にタオルを入れることを指示することがありましたが、窒息のリスクもありますので、現在では推奨されません。

熱性けいれん|予防法

熱性けいれんを起こしたことのある子どもは、熱が出たときに処方される薬に含まれていることがある、「抗ヒスタミン薬」を飲むと、けいれんの持続時間が長くなる傾向があると言われています。
したがって、かかりつけ医や救急外来を熱のために受診する際は、必ず熱性けいれんを起こしたことがあることは伝えておきましょう。

再発する危険性の高いお子さんにのみ、発熱時にけいれんを予防する薬を使うことがあります。
どのような場合に予防薬を使用するかについては、基準が定められていますので、医師の指示にしたがってください。

予防薬はお尻から入れる座薬で、37.5℃以上の熱が出たときに1回、また熱が続いていれば8時間後に再度使用します。
このお薬は眠くなる作用がありますので、使用するとお子さんがふらついてしまったり、眠り込んでしまったりすることがあります。
また薬の量は体重に合わせて決めていますので、成長すると量を増やす必要があります。

さらに成長に従い不要になることが多く、発作が1〜2年ない場合も予防薬の使用を中止することがあります。
予防薬の増量や中止の判断はかかりつけ医が行います。

熱が出たとき、いざというときに必要になるものですので、普段の受診の際に、増量すべきか、あるいは中止できるのかなど、かかりつけ医に確認をしておきましょう。

なお、以前は解熱薬を使用するとけいれんの再発を予防できる、あるいは解熱薬を使用すると、熱が下がって再び上がるときにけいれんが起こりやすくなる、などと言われたことがありますが、現時点では明確な根拠がないことがわかっています。 したがって、お子さんが熱で苦しんでいるときには、解熱薬を使用しても構いません。

まとめ

熱性けいれんについて、またご自宅でできる対処法についてご説明しました。 その多くは問題がなく、一回きりのものです。 お子さんが熱性けいれんを起こしたとしても、単純性熱性けいれんであれば過度に心配する必要はありませんので、ご安心ください。