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【小児科医師執筆】赤ちゃんの肌トラブル対策と受診の目安|新生児痤瘡・乳児脂漏性湿疹・あせも・アトピー性皮膚炎

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

みずみずしい赤ちゃんの肌ですが、ときに発疹ができることがあります。
赤ちゃんにできる発疹は、まとめて乳児湿疹とも言われますが、何が原因で、どのように対処すればよいかわからない方もおられるのではないかと思います。あるいは、アトピーじゃないかと心配になる方もおられるでしょう。
そこで今回は、赤ちゃんによくみられる肌のトラブルについて、ご自宅でできる対策、受診の目安についてご説明します。

赤ちゃんによくみられる肌トラブル|新生児痤瘡

まず生まれて間もない新生児の頃にみられる、新生児痤瘡(ざそう)についてご説明します。

新生児痤瘡の特徴

【新生児痤瘡(ざそう)】
新生児痤瘡(ざそう)とは、生後2週間頃から数か月までの赤ちゃんの肌にできる、ニキビのことです。

数ミリ程度の大きさの白や赤の発疹で、思春期の頃にみられるニキビに似た発疹です。
顔のどこにでも発生する可能性がありますが、頬、鼻、額にできることが一般的です。
新生児痤瘡(ざそう)ができる原因はよくわかっていません。ただよくみられるものであり、一過性のものです。通常、傷跡を残さずに治ります。

新生児痤瘡の対処法

特別な処置をしなくても、自然に改善していきます。
もし数が増えて気になるときは、お風呂のときなどに、赤ちゃんの顔をぬるま湯で洗いましょう。
赤ちゃんの肌に優しいマイルドな石鹸を使うことは問題ありませんが、お湯だけで洗っても構いません。
ニキビ用のクリームや洗顔剤を使う必要はありません。
また炎症を起こし、悪化する可能性がありますので、ニキビを潰すことは避けてください。
新生児痤瘡の対処法

新生児痤瘡の受診の目安

なかなかよくならない、数が増えるなど、気になる場合は、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。
もしニキビが大きくなって膿で満たされていたり、痛みを伴ったりする場合は、早めにかかりつけ医を受診することを強くお勧めします。

赤ちゃんによくみられる肌トラブル|乳児脂漏性湿疹

次に、乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)についてご説明します。

乳児脂漏性湿疹の特徴

乳児脂漏性湿疹は、生後1か月頃から生後12か月頃の間の赤ちゃんにみられます。
通常は、湿疹を覆うように黄色いかさぶたのようなものが、頭部や額を中心にできます。ひどくなると首回りや耳の周囲、脇の下などに広がります。
これはホルモンの影響を受けて皮脂が多く分泌されるためで、一過性のものです。
肌に違和感や刺激があるように見えるかもしれませんが、通常はかゆみもなく、赤ちゃんを悩ませることもありません。

乳児脂漏性湿疹の特徴

乳児脂漏性湿疹の対処法

乳児脂漏性湿疹ができた場合の自宅での対処法をご説明します。
まず、赤ちゃんの頭皮をマイルドなベビーシャンプーで毎日洗います。洗う際は、シャンプーを泡立て、髪の毛を指の腹で優しくマッサージします。
また赤ちゃんの髪を優しくブラッシングすると、黄色いかさぶたが取れやすくなります。柔らかい歯ブラシでも大丈夫です。
ただし出血や感染症の原因になるので、爪や鋭利なもので頭皮のかさぶたを摘まないようにしてください。
頭皮のかさぶたをほぐすために、少量のワセリンやミネラルオイルを塗布し、数時間から一晩つけたままにしてもよいでしょう。
かさぶたが消えた後は、週に2~3回は洗髪して、再発を防ぎましょう。なお洗髪後はしっかりとシャンプーを洗い流します。

乳児脂漏性湿疹の受診の目安

自宅でのケアを開始して1週間を経過しても改善しない、あるいは悪化するときは、かかりつけ医を受診しましょう。
また湿疹が首や体に広がる、湿疹が赤く腫れて痛みを伴っている、膿が流れでているといった場合も、かかりつけ医を受診することをお勧めします。

赤ちゃんによくみられる肌トラブル|汗疹(あせも)

汗をかく赤ちゃんによくみられる汗疹(あせも)について、ご説明します。

汗疹(あせも)の特徴

汗疹(あせも)は、汗が出る毛穴がふさがることが原因で起こります。
暑かったり、湿度が高かったりするとよく起こります。
汗をかいても、汗が出る毛穴がふさがれていると汗が出ていかないため、その毛穴の場所に小さな赤い発疹ができます。首、胸、背中など、汗をたくさんかく場所・肌が重なり合う場所によくできます。

汗疹(あせも)の対処法

汗疹(あせも)ができてしまったときの対処法をご説明します。
汗疹(あせも)は自然によくなることが一般的ですが、悪化を防ぐためにも次のような対応を心がけてみましょう。
  • ・汗をかいたらこまめに着替え、濡れたタオルなどで汗を拭き取る
  • ・通気性・吸湿性に優れた素材の服を着る
  • ・室内の風通しを良くし、汗疹(あせも)ができやすい夏は25〜27℃あたりで室温を調節する
  • ・入浴後は保湿のためのローションなどを使う

汗疹(あせも)の対処法
なお軟膏やパウダーの使用は、毛穴をふさぐことにつながるため、汗疹(あせも)ができているときは、避けたほうがよいでしょう。
またときに汗疹(あせも)がかゆくて引っ掻く赤ちゃんがいます。肌に傷がつくと感染の原因にもなるので、爪は切っておくことをお勧めします。
また、特に暑い季節は汗疹(あせも)ができないようにするために、汗疹(あせも)ができていなくても、先にご紹介した対処法を取っておくとよいでしょう。

汗疹(あせも)の受診の目安

汗疹(あせも)ができている赤ちゃんが、かかりつけ医を受診する目安について、ご説明します。
まず数日間自宅でケアをしても改善しないときは、かかりつけ医に相談しましょう。
また発疹が広がり、局所から膿が出てくるような場合、熱が出ているような場合は、汗疹(あせも)にできた傷口から感染が起こっている可能性があります。
特に熱が出ているときは、治療を早く開始したほうがよいこともありますので、早めにかかりつけ医に相談することをお勧めします。

赤ちゃんによくみられる肌トラブル|アトピー性皮膚炎

赤ちゃんにみられる肌トラブルの最後として、アトピー性皮膚炎について説明いたします。

アトピー性皮膚炎の特徴

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、早ければ生後数か月くらいからみられます。
頬、額、頭などの肌が乾燥することに始まり、次第に赤い発疹が出現します。
その後、状態が進行するとかゆみが強くなってきます。かゆいために引っ掻くと、肌に傷がつき、ジクジクと湿った状態になり、かさぶたができるようになります。
また発疹は耳の周囲、口の周り、あごなど顔面に広がり、首、脇の下、肘の内側や膝の裏側など、肌がすれるところにできるようになります。さらに広がると胸や背中にも赤い発疹が広がります。
特定の食べ物や花粉などにアレルギーを持っている赤ちゃん、両親がアレルギー疾患を持っている赤ちゃんは、アトピー性皮膚炎を発症する可能性が高くなる傾向があります。
アトピー性皮膚炎の赤ちゃんの多くは、生後3か月〜生後5か月頃が症状のピークですが、時間の経過とともに改善し、1歳になる頃には症状が出なくなることもあります。

アトピー性皮膚炎の対処法

アトピー性皮膚炎の自宅での対処法の基本は、まず保湿することです。
保湿することは、アトピー性皮膚炎の症状を和らげるのに役立ちます。
まず自宅でできることとして保湿性の優れたワセリンのような軟膏を使用することは、肌を保護するためにも役立ちます。また保湿を目的に、乾燥し炎症を起こしている肌に、濡れた布や包帯を使用することもあります。
アトピー性皮膚炎の対処法

アトピー性皮膚炎の受診の目安

アトピー性皮膚炎の赤ちゃんには、肌の治療だけでなく、原因を特定し、できる限り原因を除去した生活を検討する必要があります。
したがってアトピー性皮膚炎が疑わしいときには、早めにかかりつけ医に相談しておくことをお勧めします。
かかりつけ医は、アトピー性皮膚炎を診断するため、発疹の状態などを観察します。その際、症状の経過や食べたものが記録されていると、診断の助けになることがあります。
ステロイドの入った軟膏は、アトピー性皮膚炎の治療によく使用されます。かゆみを抑えることを目的に飲み薬を使うこともあります。これらは、医師の指導のもとで使用すべきです。

また、症状を悪化させる誘因を特定し、誘因を回避することが、アトピー性皮膚炎の症状を予防することにつながります。
赤ちゃんの場合は食べ物が誘因となることが多いため、母乳で育てている場合は、ママの食べ物にも注意が必要となることがあります。

まとめ

赤ちゃんによくみられる肌のトラブルについてご説明しました。
その多くは長く続くものではありませんが、適切なケアをすることで、赤ちゃんにとって心地よい環境を維持することができるようになります。ぜひ家庭でできる対処法に取り組んでみてください。
なお、今回の説明には「突発性発疹」は含めていません。突発性発疹は多くの赤ちゃんが経験しますが、数日間熱が続いたあとに淡いピンク色の発疹が身体中に広がる特徴があります。突発性発疹の発疹そのものは、数日以内に消えていくものですので、何も対処する必要はありません。ご安心ください。