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【小児科医師執筆】気を付けたい!子育て中によくある事故事例|赤ちゃんを守る事故防止策

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

子育て中の悩みのひとつ。それは目を離したすきに赤ちゃんがどこかに行ってしまい、怪我をすることではないでしょうか? 実は、日本において赤ちゃんが命を落とす原因の主なもののひとつが、「事故」です。 そこで今回の記事では、赤ちゃんに起こりやすい事故、そしてその予防策についてご説明します。

家庭のなかでよく起こる赤ちゃんの事故

まず初めに、家庭のなかで発生する事故についてご説明します。

赤ちゃんが溺れる溺水(できすい)事故

溺水は、自宅で子どもが命を落とす最大の原因となっています。
保護者の目が届かないときにお風呂の残り湯で溺れることや一緒に入浴していても、保護者が目を離した時に溺れることが、よくあるパターンです。
お風呂の水深が30cmを超える場合は、リスクがあると考えるべきです。
そして子どもは数センチの水の深さで、静かに溺れてしまうことがあることを知ることです。 “Silent Drowning”と言われますが、音もなく沈んでいきます。

溺水・溺死を防ぐ
【赤ちゃんの安全対策】

溺死を防ぐための安全対策には、以下のようなものがあります。
①準備をしておきましょう
子どもがお風呂に入る前に、入浴に必要なものをすべて準備しておき、あとから取りに行かなくてもよいようにしておきましょう。

②積極的に監督する
水のなかや周辺では、常に目を合わせ、手が届く範囲にいるようにしてください。なお赤ちゃんの首に巻きつけて使うことができる首浮き輪がありますが、十分に空気が入らずに使用していた、知らないうちに首浮き輪が外れた、などの理由で、保護者と一緒に入浴していても溺水した赤ちゃんの報告が多数あります。

③お風呂の水は使用後すぐに空にする
入浴後に水は抜き、使用しないときは浴室のドアを閉めておきましょう。

赤ちゃんの転落事故

転倒・転落は、あらゆる年齢の子どもたちの最も一般的なケガの原因です。
怪我の重症度は、子どもが落ちる高さ、子どもが落ちる表面の硬さ、そして子どもが落ちるときに何にぶつかるかによって異なります。
歩き始めた赤ちゃんは、軽い程度の転倒が頻繁に起こります。

転倒・転落を防ぐ
【赤ちゃんの安全対策】

安全対策としては、以下のようなものがあります。
● つまずく原因となる危険なものを取り除く
おもちゃや敷物、電気コードなど、床にある危険物を取り除いて、安全で遊びやすい場所を作ります。

● オムツ交換を高いところでしない
寝返りを打つことができるようになると、オムツ交換も高いところでしてはいけません。常に片手を赤ちゃんから離さないようにしましょう。赤ちゃんを着替え台に乗せる前に、すべてのものを準備しておきましょう。

● 歩行器を使用しない
安全対策が万全でない場所で歩行器を使用すると、幼い子どもは体のコントロールがうまくできず、階段や段差で転落する可能性があります。

● ハーネスを使用する
ベビーカーやハイチェアを使用する時は、必ず全身用(5点式)の安全ハーネスを使用しましょう。

● セーフティゲートを使用する
階段の上下に階段へのアクセスを制限するセーフティゲートを使用しましょう。

● 滑り止めを使用する
階段の縁など、滑りやすい場所には滑り止めをつけておきましょう。お風呂場には、滑りにくいゴム製のマットなどを敷きましょう。

● 家具の配置に気を付ける
子どもが窓から落下するのを防ぐために、窓際にソファなどの家具を置かないようにします。子どもの目線になって注意して配置しましょう。

● 窓にガードを設置する
網戸の設置は、子どもの落下を防ぐものではありません。窓にガードを設置しましょう。窓が簡単に開いてしまわないように子どもの手が届かない場所にロックを追加することも必要でしょう。

赤ちゃんのやけど事故

自宅で起こり得るやけどは、熱湯をかぶってしまう、加湿器や炊飯器の蒸気、熱くなったやかんやストーブに触れてしまうことが原因になっています。
また電気コンセントに金属物を入れてしまうことで、電気によるやけども発生しています。

一般的に幼い子どもは熱い液体や蒸気によるやけどを負う可能性が高く、年長の子どもは熱くなったものに直接触れることによるやけどを負う可能性が高くなっています。

やけどを防ぐ
【赤ちゃんの安全対策】

やけどへの安全対策として、以下のようなものがあります。
● 火災報知器を設置し、定期的に点検する
火災報知器は法律で設置が義務付けられています。電池が切れていないか、定期的な点検が必要です。

● ガードを設置する
すべてのヒーターやストーブの周りに、子どもがアクセスできないように高さ70cm以上の固定ガードを設置しましょう。

● 熱いものの置き場所に配慮する
熱湯や熱いものは、テーブルや設置場所の縁から30cm以上の距離をとって置く。料理しているときも、鍋の取手が子どもの手の届く高さにある場合は、取手の向きを工夫することで、子どもが手を伸ばして熱湯をこぼしてしまう事故を防ぐことができます。

● 熱いものを食卓にあげない
子どもが小さいうちは、カセットコンロや鍋、ホットプレート、電気ケトルなど熱いものを食卓には置かないようにしましょう。

● コンセントカバーをつける
感電防止のために、コンセントカバーをつけましょう。


やけどをした場合の対応
やけどをした場合は、冷たい流水の下に最低20分は浸けておき、それから受診しましょう。

赤ちゃんの誤飲・窒息事故

子どもはあらゆるものを口に入れたがりますので、誤って飲み込んでしまうことがあります。また飲み込んだものが気道に入って窒息することもあります。

誤飲は、ボタン電池に要注意です。

ボタン電池が体内で通電し、食道に穴が空いてしまった赤ちゃんもいます。
またおもちゃの磁石を複数飲み込んでしまい、腸に穴が空いた赤ちゃんもいます。

また保護者や祖父母の薬を誤って飲んでしまう子どももいます。大人にとっては適量でも、子どもにとっては量が多くなり過ぎてしまい、命に関わる状態になり得ることも報告されています。
このほか、カラフルな色をしているパック式洗剤、最近使用が増えている食器洗浄機の洗剤も注意が必要です。

また、歯が生えそろう2歳前後までは食べ物を上手に奥歯ですりつぶすことができません。したがって、表面がツルッとしたぶどう・ミニトマトをカットしないで食べた結果、死亡した事例が発生しています。
基本的に、トイレットペーパーの芯を通るものは窒息する可能性があると言われています。

誤飲・窒息を防ぐ|赤ちゃんの安全対策

安全対策としては、以下のようなものがあります。
● 鍵をかけて保管する
薬や洗剤などの有害な製品は、元のパッケージに入れて、子どもが見たり手に取ったりできないところに保管しましょう。

● 整理整頓する
使用していない薬、不要な薬、期限切れの処方薬や市販薬、ビタミン剤、サプリメントは処分しましょう。

● 床を綺麗にする
ボタン電池やおもちゃは、床に落ちていることがないような注意が必要です。

気を付けたい事故事例

ベッドの隙間に挟まれて亡くなった赤ちゃん、カーテンの留め紐が首に巻きついて亡くなった赤ちゃんなど、身近なところに赤ちゃんの命を奪うものがたくさんあります。
赤ちゃんが寝るベッドには、壁や隣の家具との間に隙間ができていないか確認しましょう。
またブラインドやカーテンのコードが子どもの手の届くところにぶら下がっていないことを確認してください。

気を付けたい事故事例

家庭の外でよく起こる赤ちゃんの事故

次に家庭の外で発生する事故として、自動車と自転車の事故について、対策をご紹介します。

赤ちゃんの自動車事故対策

チャイルドシートは絶対に必要です。子どもがどれだけ嫌がっても、絶対にチャイルドシートから出さないこと、その決意が子どもを救います。
チャイルドシートの設置については、以下の通りです。チャイルドシートは体格に合ったものを正しく、正しい場所に装着することが、赤ちゃんの命を守ります。
● 生まれてから1歳頃まで:後ろ向きチャイルドシート
1歳頃(あるいは体重が10kg程度)になるまで、またはお使いのチャイルドシートの体重や身長の上限に達するまでは、後ろ向きのチャイルドシートに座らせてください。
なお、子どもの体の特性を考えると、後ろ向きに座らせる期間をもっと長くした方が安全だと考えられており、2歳までは後ろ向きに座ることを勧めている国もあります。
今後、日本でもチャイルドシートの機能に合わせて、推奨期間が変わる可能性はあります。

● 1歳から5歳まで:前向きチャイルドシート
少なくとも5歳になるまで、または使用しているチャイルドシートの体重または身長の上限に達するまでは、後部座席の前向きチャイルドシートに座らせておく必要があります。

● 5歳以降シートベルトが適切に使用できるまで:ジュニアシート
前向きチャイルドシートから卒業した後、シートベルトが正しくフィットするまでは、ベルト付きジュニアシートに座らせる必要があります。
シートベルトが適切にフィットした状態は、腰ベルトはお腹ではなく太ももの上部に、肩ベルトが首ではなく胸にかかっている状態です。

● ブースターシートなしでシートベルトが適切にフィットしたら:シートベルト
シートベルトが適切にフィットするようになれば、ジュニアシートを使用する必要はありません。
ただし安全を確保するためには、可能な限り子どもは後部座席に座らせましょう。

チャイルドシートとジュニアシートの適切な取り付けと使用方法

チャイルドシートとジュニアシートの取り付けと使用方法は、取扱説明書に従って適切に行ってください。
設置場所は、後部座席の真ん中が安全ですが、チャイルドシートが安定して設置できる方が大事です。
もし車両のサイズなどのために後部座席の真ん中に設置できない場合は、後部座席であれば構いません。

子どもの座る場所

12歳以下の子どもは後部座席に座らせましょう。
また、エアバッグの前に子どもを座らせないでください。エアバッグは、前の座席に乗っている赤ちゃんの命を奪う恐れがあります。エアバッグの前に後ろ向きのチャイルドシートを絶対に置かないでください。

一番安全な場所は、後部座席の真ん中です。可能な限り、子どもは後部座席の中央に座らせてください。

なお、チャイルドシートとジュニアシートは面倒でも必ず使用しましょう。お父さん、お母さんが必ずシートベルトを着用することと同じです。たとえ短距離の移動でも使用することで、お子さんの安全を確保することができます。

赤ちゃんの自動車事故対策

赤ちゃんの自転車事故対策

お子さんを自転車に乗せることで発生する可能性がある事故があります。
多くの場合は、お母さんが荷物も持って子どもを乗り降りさせるとき、また子どもを自転車の前後の座席に同乗させて走行している時に発生しています。
自転車に関係する事故を予防するためにできる対策は、以下の通りです。
● ヘルメットの着用
子どもの頭のサイズのあったヘルメットを着用します。しっかりと頭が隠れるサイズが目安です。

● 幼児2人同乗基準適合車の自転車
自転車は2人以上の幼児を乗せる場合、「幼児2人同乗基準適合車」のマークのついた自転車にする必要があります。自転車のサドルの高さやハンドルの操作性など、安全に配慮された自転車です。

● 体重の目安
前に乗せる場合は体重が15kg以下(1〜3歳)、後ろは20〜22kg(2〜6歳)が目安です。1歳未満は同乗を避けましょう。

● ヘルメット着用のタイミング
ヘルメットは、乗る前にかぶり、おりてから外します。

● 乗せる順番
子どもを乗せる順番は、後部座席が先、おろすときは前の座席が先です。なお、自転車に乗れば絶対にシートベルトをしっかりと着用します。転倒したときに路上に投げ出される事故を防ぐためです。

● 抱っこやおんぶについて
子どもを抱っこした状態やおんぶした状態での走行は、バランスが崩れてしまう原因になること、視界をさえぎられる原因になることもあり、避けた方がよいでしょう。ただし1歳未満であれば、しっかりと赤ちゃんを背中に固定して乗ることは、やむを得ない場合に限り可能です。

まとめ

子育て中に起こり得る赤ちゃんや子どもの事故について説明しました。
強調しておきたいことは、「気をつけましょう」で事故を防ぐことはできないということです。事実、子どもの事故は保護者が不注意だから起こっているわけではなく、十分に注意していても起こっています。
ですから、注意しなくてもよい環境を整備することです。ぜひ今回の記事の内容を参考に、赤ちゃんにとって安全な環境づくりをお勧めします。