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【小児科医師執筆】赤ちゃんの虫刺され対処法と予防策|ホームケアと注意点

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

気をつけていても、いつの間にか赤ちゃんが虫に刺されていた経験をお持ちの方もおられるのではないでしょうか?
赤ちゃんの肌は大人と比べて薄いこともあり、刺激に敏感である特徴がありますので、虫に刺されたあと、適切に対処してあげる必要があります。
今回の記事では、赤ちゃんの肌の特徴をご紹介した上で、虫に刺された時の対処法やその予防策についてご説明いたします。

赤ちゃんの肌の特徴

まず、赤ちゃんの肌の特徴についてご説明します。

赤ちゃんの肌は薄くて傷つきやすい

赤ちゃんの肌は、大人と比べても薄い特徴があります。そのために外からの刺激に対して傷つきやすい傾向があります。
例えば直射日光(紫外線)や熱いものに触れることで、容易に肌が傷ついてしまいます。
また病原菌などの体内への侵入を防ぐ肌の防御機能も十分に育っていないこと、次に紹介する皮脂成分が十分ではないこともあり、さらに気温や湿度の変化など、外界からの刺激の影響を受けやすくなってしまいます。

赤ちゃんの肌は乾燥傾向にある

生まれた直後は、生まれる前にお母さんから受け取っていたホルモンの影響もあり、肌の表面を覆う皮脂成分が十分あります。
むしろ皮脂が多い赤ちゃんもいるくらいですが、生後数ヶ月をすぎると、徐々に皮脂が少なくなってきます。
皮脂は肌の表面を覆っており、肌の保湿力や防御機能の向上に貢献しています。
したがって、皮脂が少なくなると、乾燥しやすくなることがあります。また肌の皮脂が少なくなると、肌の表面の防御機能が落ちてしまい、刺激の影響を受けやすくなります。

赤ちゃんは汗をよくかく

赤ちゃんは汗をよくかきます。
これは新陳代謝が活発なことが影響していますが、汗は蒸発するときに肌から熱を奪いますので、こまめに拭き取ってあげないと体温が下がる原因になります。
それ以外にも、汗を拭きとらないままにしておくとあせもなど肌のトラブルの元になります。
また、あせもがかゆみを伴い引っ掻くことになれば肌に傷がつき、肌の感染が悪化する理由にもなりますので、やはりこまめに汗を拭き取ることが重要です。

赤ちゃんが虫に刺された時の対処法

赤ちゃんが虫に刺された時の対処法

次に、赤ちゃんが虫に刺された時の対処法についてご説明します。

刺された部位を洗う

刺されたことがわかれば、まず傷口を洗ってあげてください。水道水で構いません。
また、洗うとともに針があれば抜く必要があります。ただ抜くときにいくつか注意点があります。

● 清潔にする
刺された傷口から細菌が侵入し、感染を起こすことがあります。消毒をする必要はありませんが、刺された部位だけでなく、針を抜く人も手をよく洗ってから処置をしましょう。

● 指でつまんでとらない
抜くときには指でつまんでとらず、できる限りピンセットや毛抜きを用います。
これは、まず処置をする人が針を直接触らないようにすることで、処置をする人を守るためです。
また、針と一緒に蜂などが持つ毒が入った袋がついていることがあり、指でつまむことで毒を体のなかに注入してしまうこともあります。
さらにダニなど、虫が肌に食いついている状態のときも、指でとると虫の体を引きちぎってしまい、虫の体の一部が肌からとれなくなってしまいます。
もしピンセットや毛抜きがない場合は、クレジットカードや硬貨などを肌に押し当てて、針や虫の体を掻き出すようにして抜き取ります。こうすることで、被害を最小限に止めることができます。

● 処置後もよく洗う
針や虫がとれたあとも、水道水で構いませんのでよく洗いましょう。
なお、以前は蜂に刺されたあとにアンモニアを塗ると良いと言われたことがありますが、効果が証明されたわけではありません。

虫さされ|かゆみ対策

蚊に刺されたあとのように、虫に刺されたところのかゆみが強くなることがあります。
通常は、しばらく冷やしてあげるとかゆみが和らぎます。
どうしてもかゆみが強いときには、市販のかゆみ止めの軟膏を塗ってあげるのがよいでしょう。
かゆみや炎症を抑える成分が配合されたパッチ(シール)でも構いません。 何よりも、刺された場所を掻き壊さない対策が必要です。傷口を掻くと、赤ちゃんの薄い肌に細菌の侵入を許してしまい、感染を起こす原因となり得ます。

虫さされ|感染対策

掻き壊さないように頑張って対処しても、感染を起こすことがあります。
【感染を起こしている可能性が高い場合】
● 刺された場所の赤みが強くなる
● 赤い場所がどんどん広がる
● 水ぶくれができる
最初は1ヶ所だけだったのに、赤く腫れた場所が何ヶ所もできるようになれば、とびひ(伝染性膿痂疹)を起こしている可能性があります。

虫さされ|病院に行く必要があるとき

虫に刺されたあとに肌の感染が広がる水ぶくれが広がる熱が出るなどの症状がみられるときは、病院への受診が必要となります。

なお、特に蜂に刺されたあとにアナフィラキシーという重症アレルギーを起こすことがあります。発疹の広がりに合わせて、呼吸が苦しい、気分が悪くて吐いてしまうなどの症状がみられるときは、急いで救急車を呼びましょう。

赤ちゃんの虫刺され予防法

赤ちゃんの虫刺され予防法

では最後に、赤ちゃんための虫刺され予防法についてご紹介します。

自宅での予防法|虫除けネット

まず自宅では、赤ちゃんが使う部屋に虫が入らないようにすることが重要です。
ただ、どうしても入ってきてしまうときに備え、蚊帳虫除けネットを使うとよいでしょう。

外出時の予防法|肌の露出を避ける

外出時、特に虫が多くいる公園や水辺を散歩するときなどは、肌の露出を避けるために長袖・長ズボンの服を着て、帽子をかぶるとよいでしょう。

外出時の予防法|虫除けスプレー

虫刺され予防法として、赤ちゃんに虫除けスプレーを使うこともあるかと思います。
ただし、注意すべきことがいくつかあります。

成分と濃度

現在、日本で使用できる虫除けスプレーの成分には、DEETイカリジンがあります。

このうち、DEETは医薬品として販売されている濃度12%から30%のもの、医薬部外品として販売されている10%以下のものがあります。
この濃度は、使用時に虫除けスプレーを塗り直す目安となる効果の持続時間を意味しており、10%だと2〜3時間、30%だと6〜8時間とされています。
つまり濃度に合わせて、塗り直す時間を調整する必要があるということです。
ただ、DEETは健康上の問題が起こり得ることが指摘され、現在は30%の製品は12歳未満の子どもに使用できません
また12%以下の製品であっても、6ヶ月未満には使用できず、6ヶ月〜2歳は1日1回まで、2歳以上12歳未満は1日3回までと制限されています。

なおイカリジンも同じく虫除けスプレーに含まれていますが、こちらは年齢の制限がありません。ただし効果のある虫の種類がDEETよりも少なくなります。
【使用時の注意点】
子ども同士で使用しない
舐める可能性を考えて手や顔に塗らない
吸い込んでしまわないように直接吹き付けない
(大人の手につけてから赤ちゃんの肌につける)など

まとめ

赤ちゃんの虫刺され対策と予防法についてご説明しました。赤ちゃんの肌はデリケートですので、虫に刺されたことがとびひにつながることがあります。また傷跡が残ってしまうこともあります。簡単に予防できるものですので、ぜひ生活のなかに取り入れてみてください。