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【小児科医師執筆】赤ちゃんのおしゃぶりのメリットデメリット|いつから?使い方と効果!影響はあるの?

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

赤ちゃんのイラストをみると、よくおしゃぶりを吸っている様子が描かれています。 ある意味、おしゃぶりは赤ちゃんの代名詞ともいえるでしょう。 でもおしゃぶりを吸うことは、赤ちゃんにどのような影響を与えているのでしょうか? 今回の記事では、赤ちゃんのおしゃぶりのメリット・デメリット、また使い方の注意点についてご説明します。

赤ちゃんのおしゃぶりのメリット・デメリット

まず、赤ちゃんがおしゃぶりを吸うことのメリット、デメリットについてご説明します。

おしゃぶりを使用する3つのメリット

おしゃぶりを吸うことのメリットとして、次のようなものが挙げられます。

①精神的安定をもたらす

赤ちゃんによっては、不機嫌になって泣いていても、おしゃぶりを吸うことで泣き止むことがあります。何かを吸うことで、一時的に気をそらせることもでき、精神的な安定をもたらすことがあります。

②鎮静効果(眠りにつきやすい)

病院で採血などの痛みを伴う処置をするとき、赤ちゃんにショ糖をつけたおしゃぶりを吸わせることで、痛みが和らぐことが検証されています。
またおしゃぶりを吸うと、眠りにつきやすい赤ちゃんがいます。ただし個人差があり、すべての赤ちゃんに有効であるというわけではありません。

③乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防効果

昼寝を含め、眠るときにおしゃぶりを使うことで、乳幼児突然死症候群の発生の危険性を50〜90%も減少させることが報告されています。
眠っている間におしゃぶりが口から外れて落ちてしまったとしても、効果があるという研究もあります。ただ、なぜおしゃぶりを吸うことで突然死の危険性が減少するのかについては、まだよくわかっていません。

おしゃぶり使用による3つのデメリット

次に赤ちゃんがおしゃぶりを吸うデメリットについて、ご紹介します。

①中耳炎のリスク

おしゃぶりを使うと、中耳炎のリスクが高まる可能性があります。
しかし、中耳炎は一般的に生まれてから6か月までが最も発生率が低くなります。そしてこの時期は、SIDSのリスクが最も高い時期ですので、SIDSのリスクも考えて使用するかどうかは考えたほうがよいでしょう。

②母乳栄養の妨げ・依存してしまう可能性

おしゃぶりの使用は母乳を飲ませることを妨げる可能性があります。ただし、この影響は短期的なもので、健康な赤ちゃんにおしゃぶりを無制限に吸わせたとしても、母乳を飲ませることに影響はなかったという研究結果もあります。
また、赤ちゃんはおしゃぶりに依存してしまうかもしれません。赤ちゃんが寝るときにおしゃぶりを使うと、おしゃぶりがないと赤ちゃんが眠れない、赤ちゃんの口からおしゃぶりが落ちると起きて泣いてしまうかもしれません。

③歯並びへの影響

おしゃぶりを長期間使用すると、歯並びの問題につながる可能性があります。
生後1年〜2年間程度、眠る時だけなど限られた時間でのおしゃぶりの使用は、一般的に歯並びの問題を引き起こすことはありません。しかし、長時間のおしゃぶりの使用は、歯並びを悪くする可能性があります。

赤ちゃんのおしゃぶりの使い方

赤ちゃんのおしゃぶりの使い方

おしゃぶりのメリット、デメリットに続き、おしゃぶりの使い方についてご説明します。

赤ちゃんのおしゃぶり|いつからいつまで使うか?

まず、おしゃぶりの使用は一般的には新生児期から2歳くらいまでが妥当です。
特に1歳を超えたら、中耳炎や歯並びへの影響などもありますので、常用は避けたほうがよいでしょう。

おしゃぶりを使うタイミング

次に実際の使用するタイミングをご説明します。
まず、以下のように限られた状況で使い始めてみましょう。
  • ・おしゃぶりは眠るときだけにする
  • ・授乳後に次の授乳時間までにする
泣き叫ぶ赤ちゃんを落ち着かせるため、最初から常時おしゃぶりを使うことは避けるべきです。
続けて気を付けるべきことをご紹介しておきます。

おしゃぶりを使う時の5つの注意点

洗浄消毒をすること

おしゃぶりは清潔にしておく必要があります。滅菌消毒のために、熱湯に浸けてもよいでしょう。一般的に、生後半年を過ぎると免疫機能が成熟してきますので、生後半年以降は食器洗剤と水で洗うだけでも問題はありません。

適切なサイズのものを使うこと

赤ちゃんの口の大きさや成長の度合いに応じて、適切なサイズのおしゃぶりを選びましょう。

劣化したものは使わない

先端が劣化しているおしゃぶりの使用は避けましょう。

紐やストラップはつけない

おしゃぶりについている紐やストラップは外しておきましょう。特に眠るときに紐がついていると、首に巻きついて窒息する原因ともなります。

無理強いしない

赤ちゃんがおしゃぶりを吸うことを嫌がるときは、無理強いしないようにしましょう。

赤ちゃんにおしゃぶりをやめさせる方法

赤ちゃんが大きくなるにつれておしゃぶりを使うデメリットは大きくなり、そのメリットを上回るようになります。
ほとんどの子どもは2歳から4歳の間におしゃぶりを使わなくなりますが、おしゃぶりを吸う習慣を断ち切るために、手助けが必要な赤ちゃんもいます。
おしゃぶりの使用をやめさせたいときに試してみる方法をご紹介しておきます。

別のものにシフトする

赤ちゃんの注意を別のものにそらし、別のもので落ち着くことができるようにしてあげます。眠るときであれば、例えばお気に入りのぬいぐるみを触らせる、などの方法を使うと、赤ちゃんの気をそらせることができます。

見えないところにおく

赤ちゃんがおしゃぶりを吸いたくならないようにするため、赤ちゃんの視界に入るところにおしゃぶりは置かないようにしましょう。

無理強いしない

おしゃぶりをやめさせるとき、無理やりやめさせようとしないほうがよいでしょう。自然と自分でやめることができるよう、先に記したように別のものにシフトしたり、おしゃぶりを見えないところに置いたりすることです。 赤ちゃんが、普段ならおしゃぶりを吸う状況で、おしゃぶりを吸わないことを自分で選んだときは、しっかりと褒めてあげましょう。
おしゃぶりの使用を中止することが難しい場合は、かかりつけの医師や歯科医に相談してみましょう。

まとめ

赤ちゃんがおしゃぶりを吸うことのメリット・デメリット、また使い方や注意点などについてご説明しました。
特に生後間もない時期は、乳幼児突然死症候群の予防効果があることがわかっていますので、赤ちゃんが嫌がらない程度に、赤ちゃんが寝ている間だけでも使用を検討するとよいでしょう。

【出典】

Leslie A, et al. Non-pharmacological pain relief. Semin Fetal Neonatal Med. 2006 Aug;11(4):246-50
Task Force on Sudden Infant Death Syndrome. SIDS and other sleep-related infant death: Updated 2016 Recommendations for safe infant sleeping environment. Pediatrics. 2016;138:e20162938; DOI: Jackson JM, et al. Pacifier use and otitis media in infants twelve months of age or younger. Pediatr Dent. Jul-Aug 1999:21(4);255-60.
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