Babyli  > 体調・病気・健康  > 【医師執筆】気づきにくい!3歳までの子どもの視力(弱視・斜視)親に出来る事
3歳までの子どもの視力

【医師執筆】気づきにくい!3歳までの子どもの視力(弱視・斜視)親に出来る事

この記事の監修医

木村 眞樹子 先生

資格・経歴

内科専門医 循環器専門医 睡眠専門医 産業医

医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。 産業医として企業の健康経営にもかかわる。 医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

子どもは、6歳くらいには大人と同じくらいの視力を持つようになります。

しかし視覚の発達時期に、何らかの邪魔が入ってしまうと、正常な視覚の成長が止まってしまいます。

弱視や斜視はご存知ですか。

10歳頃をすぎると視覚の発達は横ばいとなるためこれらの病気は早期発見し、治療することが視覚の発達に重要です。

今回は、弱視や斜視について、また弱視や斜視に気づくポイントとその対策方法についてご紹介します。

子どもの視力(弱視・斜視)について

弱視斜視視覚の発達に大きな影響があるため早期発見し、治療することが重要です。

弱視・斜視とは何か、なぜ早期発見し、治療するべきなのか、確認しましょう。

弱視とは

医学的「視力の発達が障害されておきた低視力」のことを弱視といいます。

ヒトの眼はほぼみえない状態で生まれてきます。

脳が急成長するとともに、視覚も飛躍的に発達し、大人と同じ視力になるのは3歳頃です。

しかし、発達段階の途中でなんらかの邪魔が入ると視力の成長が止まってしまいます。

眼鏡をかけても視力が1.0を下回ってしまう場合を弱視というのです。

裸眼視力が悪い状態でも、眼鏡をかけて視力が1.0でていれば正常といえます。

斜視とは

斜視は、右眼と左眼の視線が違う場所に向かっている状態のことを意味します。

視線のずれの方向によって、

・左右いずれか視線が内側に向かってしまう内斜視
・どちらかの視線が外に外れてしまう外斜視
・どちらかの視線が上下にずれてしまう上下斜視
・外方・内方まわしにずれてしまう回旋性斜視

などがあります。

斜視があると斜視側の眼は視線が合わないことから視力発達の邪魔になるほか、両方の視線が異なるため両眼視機能ができず、精密な立体感覚や奥行き感をみる機能が低下してしまうのです。

とくに子どもは視覚の発達期にあるため、この時期に斜視があると、

・両眼視機能を獲得することができない
・弱視になってしまう

ことがあります。

早期に治療を始めれば、問題ない程度にまで回復できる

弱視や斜視は早期発見、早期治療が視覚の発達にかかせません。

生まれてから3歳までに視覚は急成長をとげ、10歳頃を過ぎるとほぼよこばいとなるため治療に反応しにくくなります。

早期に治療を開始するほど、治療に反応して視力の改善が期待できます。

また斜視は早期に治療しないと、

・弱視
・ものが二重に見える複視

などの原因になります。

さらに斜視の原因が網膜芽細胞腫という悪性腫瘍の場合もあります。

弱視や斜視に気がついたら、はやく眼科を受診しましょう。

子どもの視力(弱視・斜視)

弱視・斜視に気づくポイント|家庭で気を付けられること

弱視・斜視は早期発見、早期治療が重要です。

ただ視力の発達が不十分な状態であっても子どもが不自由なく日常生活をおくることができるため、気づかないまますごしてしまうことが多くあります。

また、多少視線がおかしいと思っていても親が治療の緊急性を知らないために、つい放置してしまい治療が遅れてしまうこともあるのです。

弱視・斜視に気づくポイントについて、ご家庭で気を付けられることを確認します。

子どもの行動に注意する

乳幼児は0.2程度の視力があれば、日常生活を不自由なく送ることができてしまうため、弱視であっても普段の生活では問題が顕在化しないことが多くあります。

さらに片目だけ弱視である「不同視弱視」の子どもは、もう片方の目の視力が良いため日常生活に不自由がなく、周りの者も気づきにくいのが現状です。

そのため、子どもの様子からは弱視がわかりにくいことがほとんどです。

したがって、子どもの行動によく注意することが必要です。

例えば、

・黒目の中央が白く見える
・フラッシュをたいた写真で両眼の色がちがう

という場合には悪性腫瘍ができているかもしれません。

・テレビに近づいてみる
・目を細めてみる
・横目使いや上目遣いなど目つきがおかしい
・両方の眼の視線があわない
・目が揺れている

場合など少しでも違和感がある場合には眼科を受診してください。

3歳児健診の家庭での視力検査をしっかり行う

3歳児検診での視覚検査は、

・ご家庭で行う一次検査
・保健センター等で行われる二次検査
・二次検査で目の病気が疑われた場合、眼科で精密検査

をします。

二次検査は、ご家庭での視力検査をもとに進められます。

つまり

・ご家庭で視力検査が出来なかった場合
・0.5の視力が確認できなかった場合
・「目で気になることがある」とアンケートに記入された場合

には健診会場でもう一度眼科検査を受けますが、それ以外は受けません

したがって、二次検査や眼科精密検査は一次検査の結果から再検査が必要と判断されたお子さんが対象となるため、ご家庭での視力検査とアンケートへの記入がとても重要です。

ご家庭でしっかり視力検査を行いましょう。

最近では、3歳より前に簡便に視力のスクリーニング検査が受けられる機器もあるためかかりつけの小児科に相談してみてください。

家庭での視力検査

手遅れにならないために、親ができることとは?

弱視・斜視に気づくポイントについて、ご家庭で気を付けられることは、顔を傾けてみる等といった子どもの行動に注意し、3歳児健診の家庭での視力検査をしっかり行うことでした。

では具体的に手遅れにならないために親に出来ることはないのでしょうか。

【受診の目安】気になるようなら、すぐ眼科へ行く

斜視の場合、両目の位置がどこにあるのか、黒目の部分の大きさはどのくらいなのかをよく観察してください。

例えば、

・目の片側のみがずれてしまっている場合(恒常性斜視)
・眼位のずれが時々、あるいは1日おきに起こる場合(隔日性斜視)
・遠くや近くを見るときだけ斜視になる場合(その他の斜視の症状)

を目安にするといいでしょう。

弱視の場合、

・テレビを観るとき
・いつも近い
・転びやすい
・よく物にぶつかる
・目の前の小さなものをつかみ損ねることがある
・ぬり絵やお絵かきをしていてもすぐにやめてしまう
・片方の目を隠すと嫌がる
・ものを見るときに首を傾けている

などといった行動をする場合、注意が必要です。

子どもの場合、弱視でも不自由なく日常生活が送れてしまうことが多いです。

親が十分注意してあげることが重要です。

手遅れにならないためにも、気になるようなら、すぐ眼科へ行きましょう。

「3歳児健診」でスルーしてしまわない

3歳児健診でしっかりご家庭で視力チェックをすることが重要です。

さらに3歳児健診や眼科で「要精密検査」となった場合には、必ず眼科を受診しましょう。

異常を指摘されても眼科を受診しなければ、手遅れになってしまうことが少なくありません。

スムーズに検査ができるように家庭で片目ずつ視力検査の練習をしておくといいかもしれません。

小児眼科は一般眼科とは診察方法や治療に用いる器具なども異なりますので、できれば小児眼科専門の医院を受診するのがお勧めです。

視力検査の練習

まとめ

視覚は生涯にわたって大きく生活の質に関わってきます。

弱視や斜視といった病気は、早期発見し、治療することで生活への影響を抑えることができます。

眼の発達期間の10歳までにいかに早く発見し治療にあたれることができるかで眼の成長を促すことができるのです。

一方で、これらの病気は子どもが不自由なく日常生活が送れている中では見落としがちであり、親が少しの違和感があっても気のせいとおもい放置してしまうこともあります。

弱視や斜視に気づくためには、テレビに近づいてみる等といった日常における子どもの行動をよく注意し、3歳児健診の家庭での視力検査をしっかり行うことが重要です。

早く治療を始めることの重要性を認識し、もし少しでも気になることがある場合には、すぐに眼科を受診することをお勧めします。