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【生後2か月】赤ちゃんとの生活の注意点

【小児科医師執筆】赤ちゃんの予防接種|注意点や副反応・接種のスケジュール

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

待望の赤ちゃんが生まれて間もなくすると、予防接種が始まります。
でも予防接種にはどのようなものがあり、いつ接種すれば良いのか、どのようなことに注意すれば良いのかなど、疑問をお持ちの方もおられるのではないでしょうか?
今回の記事では、赤ちゃんの予防接種の種類やスケジュール、注意点や接種による副反応などについて解説します。予防接種を適切に受けるために知っておくべきこととして、ぜひ参考にしてください。

赤ちゃんの予防接種とは?

予防接種とは、特定の感染症にかかることから予(あらかじ)め防ぐためにワクチンをうつ(接種)ことです。

ちなみに、ワクチンという言葉はラテン語のVacca(雌牛)に由来しますが、これは世界で一番はじめに発見された天然痘ワクチンが、雌牛から作られたことが理由です。
予防接種に使われるワクチンは、防ぎたい感染症の病原体を利用しています。 人間の体は、病原体と戦う「免疫」という武器を持っています。ワクチンを使用することで体に免疫をつくり、病気にかからないようにするのが予防接種の目的です。

赤ちゃんの予防接種はなぜ必要か?

赤ちゃんの予防接種は、ワクチンで防ぐことができる感染症を防ぐことが目的です。
防ぐことができる感染症のなかでも、特に現時点では有効な治療法がないもの、重篤な後遺症を残す可能性があるものが対象になっています。

赤ちゃんの予防接種には種類がある

赤ちゃんの予防接種には種類がある

ワクチンには、生ワクチン不活化ワクチントキソイドと3つの種類があります。

生ワクチン

ウイルスや細菌など、病原体の毒性を弱め、病原性をなくしたものを利用しています。
生ワクチンは、その病原体に自然に感染するときと同じくらいの強い免疫力を作ることができ、通常は2〜3回接種すれば十分です。
なお、接種後しばらくしてからその病原体に感染したときと同じ症状が、軽く出ることもありますので、特に次に紹介する生ワクチンを接種したあとは、経過をよく観察してください。
日本国内で、赤ちゃんに接種できる生ワクチンが対象にしている感染症は、次の通りです。
  • ● 結核
  • ● はしか(麻しん)
  • ● 風しん
  • ● みずぼうそう(水痘)
  • ● おたふくかぜ
  • ● ロタウイルス感染症

不活化ワクチン

病原体の毒性を完全になくし、私たちの体が免疫を作るために必要な成分だけを抽出して作られています。
生ワクチンほどの強い免疫力を作ることができませんので、間隔を開けて何度も接種する必要があります。
しかし、生ワクチンのように接種後に、その病原体に感染したときにみられる症状が出ることはありません。
日本国内で赤ちゃんに接種できる不活化ワクチンが対象にしている感染症は、次の通りです。
  • ● B型肝炎
  • ● 肺炎球菌感染症
  • ● Hib(ヒブ):ヘモフィルスインフルエンザ桿菌感染症
  • ● 百日咳
  • ● ポリオ
  • ● 日本脳炎
  • ● インフルエンザ など

トキソイド

病原体のもつ毒素の毒性をなくし、免疫を作ることだけを目的に作られています。
不活化ワクチンと同様に、間隔を開けて何度も接種する必要がありますが、接種することでその病原体に感染したときにみられる症状が出ることはありません。 日本国内で赤ちゃんに接種できるトキソイドワクチンが対象にしている感染症は、次の通りです。
  • ● ジフテリア
  • ● 破傷風 など


赤ちゃんの予防接種のスケジュール

赤ちゃんの予防接種のスケジュール

次に赤ちゃんの予防接種のスケジュールについてご説明します。
予防接種には定期接種任意接種があります。

定期接種

予防接種法という法律に基づいて決められており、誰もが受けるべきものです。
市区町村が費用を負担してくれます。
定期接種に含まれるワクチンは、次のようなものがあります。
※ロタウイルスワクチンは、2020年10月1日から定期接種になりました。
  • ● ロタウイルスワクチン
  • ● DPTワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)
  • ● DPT-IPVワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)
  • ● DTワクチン(ジフテリア・破傷風)
  • ● B型肝炎ワクチン
  • ● 肺炎球菌ワクチン
  • ● Hib(ヒブ)ワクチン(ヘモフィルスインフルエンザ桿菌)
  • ● BCG(結核)
  • ● MR(麻しん風しん混合)ワクチン (はしか・風疹)
  • ● 水痘ワクチン(みずぼうそう)
  • ● 日本脳炎ワクチン
  • ● HPVワクチン(ヒトパピローマウイルス)

任意接種

感染症にかかり重症になることを防ぐために、個人が受けるものです。
基本的には自己負担ですが、市区町村によっては費用を負担してくれることもあります。
任意接種に含まれるワクチンは、次のようなものがあります。
  • ● おたふくかぜワクチン
  • ● インフルエンザワクチン
  • ● A型肝炎ワクチン
  • ● 髄膜炎菌ワクチン

接種スケジュール

ワクチン接種のスケジュールには、日本小児科学会から推奨されたものがあります。
かかりつけ医の先生とも相談し、接種計画を立てることをお勧めします。
ワクチンスケジュール

接種間隔の考え方

従来、生ワクチンを接種したらは27日以上、不活化ワクチンを接種したら6日以上を開けて、次のワクチンを接種する方針でした。
これは、ワクチン接種の間隔が十分に開いていないと、十分な効果が得られないと考えられていたからです。
しかし、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、研究データや諸外国の現状を十分に検討し、接種間隔が大幅に見直されました。

接種間隔の考え方
2020年10月1日より、異なる種類の注射生ワクチン(はしか、風しん、みずぼうそう、おたふくかぜ)同士を接種するときのみ、27日以上開けることとされ、それ以外の異なるワクチン間の接種間隔には、制限を設けないことになりました。

同時接種の考え方

同時接種とは、複数のワクチンを同時にうつことです。

通常、接種する場所を2.5cm以上あけて接種します。
基本的には10本のワクチンを同時にうっても、赤ちゃんの体にかかる負担はわずかであり、大きな問題はないことがわかっています。
接種間隔を開けなければいけないワクチン同士でも、同時に接種することは可能ですので、限られた期間で接種する必要がある場合などはご検討ください。

赤ちゃんが予防接種を受けるときの注意点

赤ちゃんが予防接種を受けるときの注意点

予防接種を受ける際に注意すべき点をおさらいします。
まず、ワクチンはできる限りかかりつけの小児科で接種することをお勧めします。
かかりつけの小児科医は、普段の様子を知ってくれていますし、赤ちゃんのあらゆる健康問題に対応してくれるからです。
赤ちゃんのワクチンは2か月から始まります。種類も回数も多いので、ワクチン接種のスケジュールは、母子健康手帳も参考にしつつ、あらかじめかかりつけの小児科医の先生と相談しておきましょう。

【赤ちゃんの予防接種】受診前

予防接種の時期が近づいてきたら、定期接種、公費補助のあるワクチンの「予診票(接種券)」を確認しましょう。
もし手元にない場合は、お住まいの市区町村役場の予防接種担当部署に問い合わせる必要があります。
また受診前に、ワクチン接種に関する予診票を記入しておきます。
予診票は、接種するワクチンごとに色や書式が異なりますので、混同しないように注意しましょう。

【赤ちゃんの予防接種】接種当日

接種当日は、まず体調を確認しましょう。
37.5℃以上の熱があるなど体調が悪い場合は、当日の接種を見合わせることがあります。
また母子健康手帳を忘れないように持参します。
予防接種において子どもの服がなかなか脱げないと、緊張しているお子さんの不安が増すかもしれません。
胸や背中の音が聞きやすく、腕を出しやすい、着脱の簡単な服装を心がけましょう。
子どもを怖がらせたいと思っている小児科医はいません。できるだけスムーズに予防接種を終えられるよう事前に準備をしましょう。

【赤ちゃんの予防接種】接種時

接種前に医師の診察があります。
その際に、気になることは質問しましょう。
また診察次第では、接種できないことがあることは理解しておきましょう。
注射を打つとき、痛みのために赤ちゃんが泣くことはどうしても避けられないものです。
「痛くないから頑張って!」ではなく、
「痛いけど頑張ろう!」と励ましてあげてください。

また、針を刺すときに赤ちゃんが急に動くと、注射針で周りの人を傷つけてしまう可能性があるので、危険です。
そのため、介助に入る看護師が、赤ちゃんを押さえることがあります。赤ちゃんがかわいそうに思うかもしれませんが、赤ちゃんには負担のない押さえ方ですので、ご安心ください。

【赤ちゃんの予防接種】接種後

ワクチン接種後は、通常30分間は接種した場所で様子を見ます。
これは、アレルギー反応がでないか観察するためです。
なお、当日の入浴は可能ですが、接種した場所を揉むなど、刺激を加えないようにしましょう。

赤ちゃんの予防接種後に起こり得る副反応  

赤ちゃんの予防接種後に起こり得る副反応

予防接種後に起こりうる想定外の反応が副反応です。

【予防接種後の副反応】アレルギー

ワクチンに含まれる成分に対するアレルギー反応がみられることがあります。
ワクチンをうった場所が赤く腫れる状態から、全身に発疹が出て呼吸が苦しくなる重症アレルギーまで、重症度の異なるアレルギーが起こりえます。
発疹が出たとしても、本人の機嫌が悪い、息が苦しそうなど、状態が悪くなければ慌てて病院を受診する必要はありません。予防接種をしてもらったクリニックに連絡し、指示を仰いでください。
もし状態が悪いときは救急車を呼んでも構いません。ただ、このような重症アレルギーは、ワクチン接種後30分以内に起こることが多いので、自宅に帰ってから症状が出ることはまれです。

【予防接種後の副反応】発熱

予防接種の当日よりは、数日後〜1週間後にみられることが多いです。
赤ちゃんの機嫌が悪くなければ、様子を見ても問題はありません。
もし機嫌が悪くなる、熱以外の症状がみられる場合は、予防接種をしてもらったクリニックに連絡し、指示を仰いでください。

【予防接種後の副反応】下痢・腹痛

ロタウイルスワクチンを接種したあと、下痢や嘔吐をすることがあります。
下痢をしたとしても、いつも通り授乳をして構いません。
脱水にならないよう、むしろ普段よりも少し多めに授乳しても良いでしょう。
なお、ロタウイルスワクチンを接種して2週間以内に、何度も嘔吐する、不機嫌で泣き止まない(あるいは泣いたり、泣き止んだりを繰り返す)、血便がでた、などの症状が現れたら、腸重積という赤ちゃんに起こる腸閉塞の可能性があります。
もしこのような症状が現れたら、予防接種をしてもらったクリニックに連絡し、指示を仰いでください。

【予防接種後の副反応】腫れ

4種混合ワクチンやインフルエンザワクチンを接種した後で、接種した場所が赤く腫れることがあります。
腫れたところを少し冷やしてあげることは構いませんが、あまり刺激を与えないようにしましょう。
もし腫れる範囲がどんどん大きくなる場合は、予防接種をしてもらったクリニックに連絡し、指示を仰いでください。

予防接種健康被害救済制度について

予防接種後に副反応が出た結果、重大な健康問題が発生した場合、申請に基づき審査を経て、医療費などの諸費用を支給してくれる制度です。 健康被害の発生そのものはまれなことですが、もし発生した場合はお住まいの市区町村にご相談ください。

まとめ

ワクチンは重い病気から赤ちゃんを守ることができるひとつの方法です。
予防接種には、赤ちゃん個人を守ることがいちばんの目的です。
個人が感染しなければ、周囲に感染を広げることもないので、結果的に社会全体を守ることにつながります。
ぜひ赤ちゃんの未来と社会全体を守るためにも、かかりつけ医と相談しながら接種を進めていきましょう。