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赤ちゃんの頭の形・髪の毛

【小児科医師執筆】赤ちゃんの頭の形・髪の毛|心配な場合に家庭で出来る事と受診の目安

この記事の監修医

井上 信明 先生

井上 信明先生

資格・経歴

日本小児科専門医、小児科指導医、アメリカ小児科専門医、 小児救急専門医。公衆衛生学修士(国際保健)

奈良県出身。奈良県立医科大学卒。日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科、小児救急医療を研修。日本だけでなく、特にアジアの子どもたちが、安全で安心できる環境で育つことができる社会づくりを目指しています。

生まれてしばらくすると、赤ちゃんの頭の形や髪の毛の量が気になる方がおられるかもしれません。

できるだけよい頭の形になることを願うものですが、自然と形が整う場合もあれば、なかには治療が必要となる場合もあります。

また髪の毛の量が少なかったり、薄い色だったりすると、将来のことが気になるかもしれません。

今回の記事では、赤ちゃんの頭の形や髪の毛について、どのようなことに気をつければよいのか、また病院を受診すべき目安についてご説明いたします。

赤ちゃんの頭の形について

生まれてすぐの赤ちゃんの多くは、頭が少しだけ変形しています。その変形は心配する必要があるのでしょうか。

まず赤ちゃんの頭の形が変形する原因、自宅でできること、そして治療のタイミングを理解しておきましょう。

赤ちゃんの頭の形はどのようにして決まるか?

赤ちゃんの頭の形は、産道を通っている間に変形することがあります。

また、出産後、赤ちゃんが仰向けに寝ているときに後頭部が圧迫されることで、頭の形が変わってしまうこともあります。

赤ちゃんの頭頂部には、頭蓋骨がまだ完全に成長していない部分があります。

この部分があることが、赤ちゃんの比較的大きな頭が狭い産道を通過するのを可能にします。

また、乳児期に急速に成長する赤ちゃんの脳を支える役割も担っています。

また赤ちゃんの頭蓋骨は成長する過程で変形できますが、同じ位置で頭を寝かせる傾向があると、頭の形が変形することがあります(頭位性斜頭)。

さらに、出生時の頭の変形が解消される時期を過ぎても、頭の形が整わないこともあります。

寝かせる位置に応じて頭の形が変わってしまう頭位性斜頭は、一般的には美容的な問題にとどまると考えられています。

つまり、例えば後頭部が圧迫されて後頭部が平らな形になったとしても、そのことが

・赤ちゃんの脳に障害を与える
・発育を妨げる

といったことはありません。

数ヶ月もしないうちに、頭と首をコントロールできるようになれば、赤ちゃんは頭蓋骨にかかる圧力を分散させることができるようになります。

頭の形

気になる赤ちゃんの頭の形|自宅でできること

赤ちゃんの頭の形が気になる場合、自宅でできることがいくつかあります。

寝るときの頭の方向を変える

通常赤ちゃんを仰向けにして寝かせますが、ベビーベッドで寝かせるときには、赤ちゃんの頭の向きを交互に変えます。

また、授乳のたびに赤ちゃんの頭の向きが交互になるように抱っこしてもよいでしょう。

寝ている間に赤ちゃんの頭が元の位置に戻ってしまう場合は、適宜頭の位置を調整しましょう。

赤ちゃんを抱っこする

赤ちゃんが起きているときには、できる限り抱っこをすると、赤ちゃんの頭にかかる圧力を和らげることができます。

腹ばいで遊ぶ時間を設ける

乳幼児突然死症候群のリスクがありますので、寝るときの赤ちゃんは仰向けにし、うつ伏せにすることは避ける必要があります。

しかし、

・赤ちゃんが起きているとき
・お父さんやお母さんと遊ぶとき

などは、腹ばいにしてあげるとよいでしょう。

例えば

・赤ちゃんをおなかの上に乗せて遊ぶ
・平らで硬い床の上で遊ばせる

とよいでしょう。


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【小児科医師執筆】赤ちゃんの乳幼児突然死症候群(SIDS)とは?確率と危険因子・予防対策

気になる赤ちゃんの頭の形|病院を受診すべき目安

赤ちゃんの頭の形が気になる場合、病院を受診すべき目安と、受診後に行う対処法についてご説明します。

まず自宅でできることを、生後数ヶ月まで続けていても

・赤ちゃんの頭の変形が改善されない場合
・赤ちゃんの頭の形が著しく変形している場合

には、病院の受診を検討しましょう。

状況によっては、赤ちゃんの頭の形を整えるために、ヘルメットを使用することがあります。

これは頭蓋骨形状誘導療法とも呼ばれますが、オーダーメイドのヘルメットを赤ちゃんにかぶせることで、赤ちゃんの頭の平らになった側の圧力を和らげ、より自然な形になるように誘導します。

ただし、この治療法は頭蓋骨がまだ軟らかく、脳が急速に成長している生後3ヶ月から6ヶ月くらいに治療を開始すると、最も効果的です。

ただしこの治療法は自費診療になってしまいます。

このほか、斜頸と呼ばれる首の筋肉の問題が原因で、赤ちゃんの頭が片側に傾いてしまうことがあります。

この場合、患部の首の筋肉を伸ばし、赤ちゃんがより自由に頭の位置を変えられるようにするために、理学療法が必要になります。

まれに、赤ちゃんの頭蓋骨でまだ完全に成長していなかった部分が、早期に成長して硬くなることがあります。

原因はさまざまですが、早期に硬くなってしまうと頭の形が寝るときの頭の位置とは無関係に変形し、脳の成長にも影響を与えることがあります。

一般的には赤ちゃんの時期に治療が必要で、脳の成長と発達に十分なスペースを与えるために、頭蓋骨を外科的に分離しなければなりません。

いずれにしても、赤ちゃんの頭の形が気になる場合は、早いうちにかかりつけの医師に相談しましょう。

頭の形 病院を受診すべき目安

赤ちゃんの髪の毛について

次に赤ちゃんの髪の毛について、その特徴や起こりうる問題、ケアの注意点などをご紹介します。

赤ちゃんの髪の毛の特徴

わたしたちの髪の毛には

・成長期
・休止期

があります。

成長期は約3年持続し、休止期は約3ヶ月持続します。

休止期の間、毛髪は新しい毛が生え始める準備をしています。

通常、髪の毛の約10%前後は休止期にありますが、

・ストレス
・発熱
・ホルモンの変化

などにより、大量の毛髪ができなくなることがあります。

抜け毛が始まるのは、次の成長期が始まる約3ヶ月後頃です。

生まれたばかりの赤ちゃんは、生まれた直後にお母さんからもらっていたホルモンがなくなり、ホルモン量が低下するため、生まれてきた時の髪の毛が生後3ヶ月頃に抜けてしまうことがあります。

実は、母親も出産後に同じ理由で髪の毛が抜けることがあります。

ちなみに赤ちゃんの髪質の一部は遺伝によって決まりますが、環境の影響を受けて変わるものです。

赤ちゃん自身の髪の毛が生えてくると、生まれつきの髪の毛とは全く違う髪質になっていることもあります。

赤ちゃんの髪の毛の特徴

赤ちゃんの髪の毛が抜けるとき

このように生まれてから半年くらいまでに赤ちゃんの髪の毛が抜けることは、多くは完全に正常で、心配する必要はありません。

このほか、頭への機械的な刺激によって髪の毛が抜けることがあります。

例えば、赤ちゃんがいつも同じ姿勢で寝る傾向がある場合は、そのベビーベッドと接する部分の髪の毛が抜ける可能性があります。

ただし、例えば甲状腺ホルモンの分泌量の低下など、赤ちゃん自身のホルモンの影響で髪の毛が抜ける場合があります。

この場合、多くは髪の毛が抜けるだけではなく、その他の症状もみられます。

赤ちゃんの頭皮ケアの注意点

赤ちゃんの頭皮は、生まれた直後の頃は皮脂量が少なく、刺激を受けやすい状態にありますが、数ヶ月もしないうちに皮脂量が増え、黄色いかさぶたのような塊が頭皮につくことがあります。

このような赤ちゃんの頭皮の特徴に配慮しながら、ケアをする必要があります。

洗髪

洗髪するときのシャンプーは、刺激の少ない赤ちゃん用のものを使います。

赤ちゃんの全身に使うことができる製品であれば、なお安心です。

洗髪は必ずしも毎日する必要はなく、皮脂の状態や汗のかき具合で判断します。

目安として最低でも週2回くらいでしょう。場合によってはお湯だけで洗っても構いません。

洗髪時は、下記の流れで洗いましょう。

1.お湯で頭皮と髪を濡らす
2.シャンプーを泡だてる
3.優しく頭皮をマッサージするように洗う

洗髪後はしっかりとシャンプーを洗い流しましょう。トリートメントを使う必要はありません。

くしでとかす

髪の毛をくしでとくことで、頭皮を刺激し、健康的に皮脂分泌を促します。

ただし、赤ちゃんの頭皮は敏感なので、やさしくとくようにしましょう。

くしは、歯が大きく、柔らかい材質のものを使います。1日1~2回で十分です。

保湿

赤ちゃんの髪の毛が抜け落ちてしまっている場合は、頭皮をよい状態に保つために保湿剤を使うようにしましょう。

赤ちゃんの頭皮ケア

まとめ

赤ちゃんの頭の形や髪の毛に関する問題についてご説明しました。

生まれてから数ヶ月間に見られる頭の変形や抜け毛は、多くの場合大きな問題ではありません。

特に赤ちゃんの頭の形を気にしすぎると、赤ちゃんの成長を楽しむチャンスを逃してしまうかもしれません。

心配なことがあれば、ぜひかかりつけ医にも相談し、この記事を参考に赤ちゃんの頭の形や髪の毛のトラブルに対処してみてください。